黒いライオンを探して

東京恵比寿にあるGallery and shop 山小屋での2021年個展展示作品。
この展示も自作の文章を元に描いた作品群です。


黒いライオンを探して

ずいぶんと前から探している、黒いライオン。
そいつはある日突然やって来た。
いつだったかは覚えてない。

どこから来たのか知らないけれど、怖くはない。
どちらかといえば愛嬌もある。

遠くにいるとはっきり見えるのに、
近づけば近づくほどぼんやりと透けて、
僕の体をするりと抜けていく。

時々ふと、居なくなってしまったような気がする事もあるけれど、
目を凝らせば思いがけないところにちゃんといる。

風の吹く丘の上
ポスターの隅っこ
夕暮れの窓の向こう側

そんなのただの幻さ、と言う人もいる。
けれど耳をすませば、はっきりと心音が聞こえるんだ。

そんなに隠れんぼが好きなら、一緒に遊ぼうか。
別に見つけられなくてもいいんだ。

思うに、僕はただこうして、
奴と戯れていたいだけなのかもしれない。
そして、いろんな景色が見られればいいな、と思っているんだ。

寝静まった夜の路地
木洩れ日に揺れる草葉の下
水平線の白い鳥

街と森と海の間で、

いつか、時が来るまで。